Quantcast
Channel: Filmers
Viewing all articles
Browse latest Browse all 15

『シェイプ・オブ・ウオーター』から学ぶ クソな社会を変える方法

$
0
0

どの映画を観に行こうか? 公開予定の作品一覧に目をやると…テレビやCMでよく見た顔ばかりが目につく。どれも似たような印象で逆に目に止まらない。そんななか…碧と水色だけのシンプルなビジュアルが飛び込んでくる。

th_SOW_POSTER_main.jpg

(C) 2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

よくみると水色は「水の中」を写しているからで…中央で抱きしめ合う赤いワンピースの女性と腕にヒレの生えた不思議な生き物が浮かび上がってくる。「恋愛系の映画かな?」…その予感は正しい。だけど、その予感だけで「恋愛モノに興味ねぇ〜」とスルーしてしまうのは、もったいない。この作品をひとことで表すならこうだ「人間と半魚人がクソな世界から脱出する恋愛ファンタジー」。

th_SOW_sub5.jpg

『シザーハンズ』や『野獣と美女』のような愛のおとぎ話は、ちょっと『アメリ』のような世界観も加わって…デートムービーにはもってこいだ。半魚人と恋に堕ちるイライザを演じるのはサリー・ホーキンス。最近、パート2が公開されたファミリー映画『パディントン』で ”くま” のパディントンを受け入れる家族のお母さん役でもおなじみだ。本作では言葉を喋ることができない地味な掃除係のおばちゃんとして登場し、不思議な生き物との濡れ場も演じている。

th_SOW_sub2.jpg

でも、単に「人間でない者との恋愛」を描いたファンタジーでは終わらない「深み」が、この作品をアカデミー賞最多13部門ノミネートに導いている。物語は1960年代、ソ連と冷戦まっただなかのアメリカが舞台。半魚人の特殊な生態を解明できれば冷戦を勝ち抜けるかもしれないと考えたアメリカは極秘の研究施設で飼育することとなり…掃除係のおばちゃんは、そこで出会う。

th_sw main1.jpg

それぞれは「人間」と「人間でないもの」という意味で別々だけど、世の中から仲間はずれにされた存在/コミュニケーションが取れない(と思われている)存在としては同じ人は得体の知れないものを恐れて仲間はずれにしたり、自分の方が上なのだと力を見せつけて支配しようとする。まったく…ホント、クソだと思う、そんなコト…。

th_SOW_sub6.jpg

th_SOW_sub4.jpg

(C) 2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

そんなクソな状況をブチ破って世界の可能性を広げるため、わたしたちが大切にすべきモノは何か? 作中に配された「得体の知れないもの」たちの言動によって、そのヒントが示される。国家、障害者、同性愛者、黒人、ジェンダー…ありとあらゆる差別・偏見に疲れ果てた者たちが、自分たちを仲間外れにし、支配しようとする「クソな世界」に抵抗を試みる。その姿はじつに痛快だ! だからこの映画をカップルのモノだけにするのはもったいない。会社や学校、コミュニティで何かしら仲間はずれにされ孤立している方にとっても、地味なおばちゃんと半魚人の「禁断の恋」に何かしらの希望を感じることがあるハズだ。

(文責:FILMERS編集長 きたむらけんじ)

 

シェイプ・オブ・ウォーター』

【監督】  ギレルモ・デル・トロ
【キャスト】サリー・ホーキンス、マイケル・シャノン、リチャード・ジェンキンス、ダグ・ジョーンズ、マイケル・スツールバーグ、オクタヴィア・スペンサー
 
 
■公開日
2018年3月1日(木) 全国ロードショー
 
■公式サイト
 


Viewing all articles
Browse latest Browse all 15

Latest Images

Trending Articles





Latest Images